「正常」の表示の裏で、バックアップが止まっていた。NAS障害から3か所保管の体制へ【商店街振興組合IT再整備・番外編】
商店街振興組合のIT再整備は、前回の第3回で一区切りとしました。
今回は番外編として、その少し前に起きた事務所のNAS(共有フォルダー用の機器)の障害と、それをきっかけに整えたバックアップ体制についてご紹介します。
NASが突然、見えなくなった
9月のある夜、事務所のNASがネットワーク上から見えなくなりました。事務所のパソコンから共有フォルダーを開けない状態です。
翌朝、NASをつなぎ直したところ復旧し、データにも再びアクセスできるようになりました。管理画面では、内蔵の2台のディスクも、2台で同じデータを持つ仕組み(RAID1)も「正常」と表示されています。
ひとまず安心しましたが、念のため、NASに記録されていたバックアップの履歴を確認することにしました。
バックアップは、静かに失敗していた
このNASには、毎晩0時にUSBハードディスクへ自動でバックアップを取る設定がされていました。
ところが履歴を確認すると、障害の数日前から書き込みのエラーが出始め、日を追うごとに悪化していました。最後には、ディスクそのものが認識されない状態になっていました。
さらに調べると、一部のフォルダーはUSBディスク上で開けなくなっていました。業務上大切なデータを含むフォルダーが、毎晩のバックアップから漏れていたのです。
一方で、NASの管理画面では、USBディスクの状態は「通常」と表示されたままでした。NAS自身は、異常に気づいていませんでした。
「バックアップは取っているはず」という安心が、実際には成り立っていなかったことになります。
まず、データを守る
こうしたとき、すぐに初期化や修復を試みたくなります。しかし、操作を誤ると、残っているデータまで失うおそれがあります。
今回は、次の原則で進めました。
- データの保全が終わるまで、初期化や修復などの元に戻せない操作は行わない
- 元のデータは読み取りのみとし、書き込まない
- コピーしたデータは、中身が元と一致しているかを必ず確かめる
まず、USBディスクをNASから取り外し、第1回でLinux Mintに入れ替えて再生したPCにつないで調べました。ディスクの健康状態を示す値に異常はなく、全てのファイルを読み取ることができました。
そこで、ディスクの中身、約76GB・約2万4千件を、NAS上の別の場所へ救出しました。
途中、PCに付けていたUSB型のWi-Fiアダプターが応答しなくなり、コピーが止まるトラブルもありました。PCを有線LANにつなぎ替えて再開し、最後まで完了しています。コピーの後は、全てのファイルについて中身が一致していることを確認しました。
Googleドライブに、もう一つの控えを
NASとUSBディスクは、どちらも事務所の中にあります。機器の故障だけでなく、停電や災害の際に同時に影響を受けるおそれがあります。
そこで、前回ご紹介したGoogle Workspaceのドライブを、事務所の外の保管先として活用することにしました。
NASの業務データをGoogleドライブへ送る作業には、rcloneというツールを使いました。ところが、初回の保存には約57時間かかりました。その大半は実際の転送ではなく、待ち時間でした。
原因は、ツールが標準で使っているGoogleとの接続の枠が、世界中の利用者と共用で混み合っていたことです。事務長に協力していただき、組合専用の接続設定を作成したことで解消しました。費用はかかっていません。
また、この作業の途中で、大雨の影響により商店街全体で大雨の影響で約15分の停電もありました。
保存が終わった後、事務所の業務ファイル約2万4千件について、NASとGoogleドライブの中身を1件ずつ照合しました。一致しなかったわずかなファイルも、当日に職員が編集したものなど、全て理由を確認しています。
毎日の自動バックアップと、失敗の知らせ
今回の障害で分かったのは、バックアップは「設定したら終わり」ではないということです。失敗に気づける仕組みがなければ、同じことが起こります。
そこで、次の形で自動化しました。
- 毎日午前2時に、その日に変更されたファイルをGoogleドライブへ保存する
- 失敗した場合は、理事長、事務長、私の3名にメールで知らせる
- 毎週月曜日に、前週の実行結果の要約が私に届く。成功の回数が足りない週は、件名に【要確認】と付く
成功したときは通知しないため、事務局の方の受信箱を煩わせることはありません。
USBディスクの原因と、再利用
USBディスクをさらに詳しく調べたところ、ディスク本体は機械として健全でした。壊れていたのは、ディスク上の「どこに何があるか」を記録した管理情報でした。
USBハブを経由した接続や、電源の入り切りの際に、記録が途中で途切れたことが原因と考えられます。
救出したデータがNASとGoogleドライブの2か所に保存されたことを確認した後、ディスクを初期化しました。そのうえで、接続先をNASからバックアップ用のPCに変え、毎日のGoogleドライブへの保存に続けて、USBディスクへも自動で保存する設定にしました。
停電への備え
作業中に実際に停電を経験したことから、NASとバックアップ用のPCを無停電電源装置(UPS:停電時に一時的に電気を供給する機器)につなぎ替えました。
停電が5分続くと、NASが自動で安全に停止します。電気が戻れば、NASとPCは自動で起動します。
3か所に保管する体制へ
これで、事務所のデータは次の3か所に保管されるようになりました。
- NAS本体(2台のディスクで同じデータを保持)
- Googleドライブ(事務所の外)
- USBハードディスク(バックアップ用PCに接続)
事務所の方には、USBディスクをNASへつなぎ替えないこと、UPSにつないだ機器の電源ケーブルを抜き差ししないことをお願いしています。
バックアップは「確かめる」までが仕事
今回の障害で、データが失われることはありませんでした。ただ、それは気づくのが早かったからです。
管理画面が「正常」と表示していても、バックアップが本当に取れているとは限りません。バックアップは取るだけでなく、取れていることを確かめ、失敗したら気づける状態にしておくことが大切だと、改めて実感しました。
第1回で再生したPCが、今回はバックアップ用のPCとして事務所のデータを守っています。古い機器を活かすことと、データを守る仕組みを整えることは、一つながりの取り組みだと考えています。
次回予告:(次回は、これまでの取り組みをもとにした新しいサービスについてご紹介する予定です)


