古いPCをTailscaleでつなぐ。Raspberry PiとOdroidで複数拠点を一つのネットワークへ【古いPC再生③】
再生したPCを、今度は「つなぐ」
前回は、古いiMacやVAIOにLinux Mintを導入し、ThinkPadと組み合わせながら、事務所全体の作業環境へ組み込んだ話をご紹介しました。
古いPCを再生して、それぞれに役割を持たせる。
そこまでは事務所の中の話です。
しかし実際の仕事では、メインオフィスだけですべてが完結するわけではありません。
Namiki Associatesでは、
- メインオフィス
- セカンドオフィス
- 外出先のPC
- Raspberry Pi
- Odroid
- VPS
など、場所も種類も異なる機器を使っています。
そこで次に考えたのが、
これらを安全につなぎ、一つのIT環境として使えないか
ということでした。
そのために現在使っているのが、Tailscaleです。
Tailscaleで離れた機器をつなぐ
Tailscaleは、離れた場所にあるPCやサーバー同士を、インターネット上で安全につなぐための仕組みです。
通常、外部から事務所内の機器へアクセスしようとすると、ルーターにポートを開放したり、VPNサーバーを構築したりといった設定が必要になることがあります。
Tailscaleを使うと、対応するPCやLinuxサーバーへクライアントを導入することで、それぞれの機器をプライベートなネットワークの中へ参加させることができます。
Namiki Associatesでも、
外出先のMacBook Air
│
│
Tailscale
│
┌────┴────┐
│ │
メイン セカンド
オフィス オフィス
│ │
Odroid Raspberry Pi
│ │
Linux PC LAN内機器
というような構成で使うようになりました。
VPSなど、インターネット上にあるLinuxサーバーも同じネットワークへ参加させています。
場所は違っていても、必要な機器同士を安全につなげられる環境になりました。
Raspberry PiとOdroidをサブネットルーターに
ここでもう一つ便利だったのが、Tailscaleの「Subnet Router(サブネットルーター)」という機能です。
PCやLinuxサーバーならTailscaleを直接インストールできますが、事務所にあるすべての機器へTailscaleを入れられるわけではありません。
例えば、
- プリンター
- スキャナー
- NAS
- ネットワーク機器
- その他のLAN接続機器
などです。
そこでメインオフィスではOdroid、セカンドオフィスではRaspberry Piを常時稼働させ、それぞれをサブネットルーターとして利用しています。
これにより、Tailscaleを直接インストールできないLAN内の機器にも、必要に応じて外部からアクセスできるようになります。
つまり、
外出先PC
│
│ Tailscale
▼
Odroid / Raspberry Pi
│
▼
事務所LAN
│
├─ PC
├─ NAS
├─ プリンター
└─ その他のネットワーク機器
という経路です。
事務所のルーターへ外部公開用のポートを増やすのではなく、Tailscaleを利用して必要な経路を作っています。
古い小型コンピューターにも役割ができた
OdroidやRaspberry Piも、最新の高性能サーバーというわけではありません。
しかし、サブネットルーターやSSH接続の中継、状態確認などの用途であれば、大きな処理能力を必要としない場合があります。
むしろ、
小型で消費電力が少なく、常時動かしておける
という特徴が、この用途では大きな利点になります。
第1回で紹介したVAIO、第2回のiMacもそうでしたが、大切なのは「古いか新しいか」だけではありません。
その機器に合った役割を見つけられるかどうかです。
高性能なPCには高性能なPCの役割があり、古いPCや小型Linux機には、それらに適した仕事があります。
外出先から事務所のLinuxへ
この環境を作ったことで、外出先や自宅からでも、Tailscaleへ接続したPCを使って事務所のLinux機へSSH接続できるようになりました。
例えば、
MacBook Air
↓
Tailscale
↓
Odroid
↓
事務所内のLinux機器
という使い方ができます。
以前であれば、
「事務所に戻らないと確認できない」
という場面でも、ネットワークに問題がなければ遠隔から状態を確認できます。
また、セカンドオフィス側もRaspberry Piを経由することで、別のネットワークでありながら必要な機器へアクセスできます。
単に「遠隔操作ができる」ということ以上に、
どこにいても同じ管理環境へ入れる
ことが、実際の運用では便利だと感じています。
便利だからこそ、何でもつなげない
一方で、接続できる機器を増やせばよい、というわけではありません。
Tailscaleを使っていても、
- どの機器をネットワークへ参加させるか
- 誰がアクセスできるか
- SSHをどのインターフェースで待ち受けるか
- パスワード認証を使うか
- 不要なサービスが外部へ公開されていないか
などは別に考える必要があります。
Namiki Associatesでは、SSHについても可能なところから公開鍵認証へ変更し、不要な外部ポートを開けない構成へ少しずつ見直しています。
便利な仕組みを導入することと、安全に運用することは別の問題です。
新しい機能を増やすたびに、実際の通信経路や権限を確認しながら使うようにしています。
1台の古いVAIOから始まった実験
振り返ると、このシリーズは2008年製のVAIOへLinux Mintを入れたところから始まりました。
最初は、
「この古いPCは、まだ使えるだろうか」
という小さな実験でした。
そこからiMacにもLinux Mintを導入し、ThinkPadを中心とした事務所の作業環境へ組み込みました。
そして今回は、PCだけではなくRaspberry Pi、Odroid、VPSまで含めてTailscaleでつなぎ、複数の場所をまたいだIT環境へ広がりました。
古いPCを再生する
↓
それぞれに役割を持たせる
↓
複数の機器を組み合わせる
↓
複数拠点を安全につなぐ
こうして考えると、古いPCの再利用は単なる節約ではありません。
手元にある機器を見直し、
「何に使えるか」「どのように組み合わせれば役に立つか」
を考えること自体が、IT環境を見直すきっかけになりました。
すべてを最新機種へ交換しなくても、LinuxやTailscaleなどを組み合わせることで、既存の機器を活用できる場合があります。
もちろん、性能、消費電力、故障リスク、セキュリティなどを考えれば、交換した方がよい機器もあります。
重要なのは、古いものを無理に残すことではなく、
使えるものと、交換すべきものを見極めること
だと思います。
次回からは、実際の組織でのIT環境整備へ
ここまでの3回は、Namiki Associates社内で実際に行ってきた取り組みをご紹介しました。
古い機器をLinuxで再生し、それぞれに役割を持たせ、さらに複数拠点を安全につなぐ。
こうした自社環境での試行錯誤は、その後、別の場所でも役立つことになりました。
次回からは少し舞台を変えて、地域の商店街組織で実際に行ったIT環境整備についてご紹介したいと思います。
古いWindows PCの再生から始まり、Webサイト、独自ドメイン、メール環境などへ。
自社で試してきたことを、実際の組織の環境でどのように応用していったのか。
その過程を何回かに分けてご紹介します。
免責事項
この記事は、筆者自身の環境で実際に行った構成・運用をもとに記載しています。
TailscaleやSubnet Routerを導入する場合は、利用するネットワーク構成、アクセス権限、ファイアウォール設定などによって適切な設定が異なります。
特に既存LANへの経路を追加する場合は、現在使用しているネットワークとの競合や、意図しない機器へのアクセスが発生しないよう、通信経路とアクセス権限を確認したうえで導入してください。

