商店街事務局にGoogle Workspaceを試験導入。メールは変えずに、一人から始める【商店街振興組合IT再整備③】

前回は、組合の公式ドメインを取得し、13年分のホームページを組合名義のサーバーへ移行した取り組みをご紹介しました。

今回は、その公式ドメインを活用して、事務局の業務環境にGoogle Workspaceを試験導入した取り組みをご紹介します。

公式ドメインを「業務」にも活かす

ホームページを組合の公式ドメインへ移したことで、ドメインを使った組合名義のアカウントを持てる土台が整いました。

次の段階として考えたのが、事務局の日常業務の効率化です。組合の事務局では、文書や表の作成、資料の共有、会議の記録など、多くの事務作業を限られた人数で担っています。こうした作業を少しでも軽くできれば、その分の時間を本来の業務に充てることができます。

Business Standardを選んだ理由

Google Workspaceにはいくつかのプランがあります。今回は、Business Standardを選びました。

一番の理由は、会議の記録です。組合では理事会や各種の会議が定期的に開かれ、そのたびに議事録を作成する必要があります。議事録の作成は、会議の内容を思い出しながらまとめる手間のかかる作業です。

Business Standardでは、オンライン会議のMeetで録画ができ、AIアシスタントのGeminiを使って会議の文字起こしやメモの作成ができます。会議の記録をAIが下書きし、人がそれを確認・修正する形にすれば、議事録の作成時間を大きく短縮できると考えました。

そのほかにも、次の機能を利用できます。

  • Drive(ファイルの保存と共有)
  • ドキュメント、スプレッドシート(文書・表の作成)
  • フォーム(申込みやアンケートの受付)
  • Chat、Meet(連絡とオンライン会議)

まずは事務長1名から

全員分をいきなり契約することはせず、事務長1名分のライセンスで試験導入としました。

  • 実際の事務作業でどの程度の効率化が得られるかを確かめてから、範囲を広げる
  • 費用を最小限に抑える
  • 使い方や管理のルールを、少人数のうちに固める

ホームページのときと同様に理事会へ予算を申請し、承認を得たうえで契約しました。契約は、ホームページで利用しているレンタルサーバーの管理画面から申し込んでいます。他の職員や理事への展開は、試験運用の結果を踏まえて改めて検討します。

あえて、メールは切り替えない

今回もっとも重視したのは、既存のメール環境を変更しないという判断です。

Google Workspaceは、Gmailを含めてメール環境ごと移行する使い方が一般的です。しかしメールは、組合と外部とのやり取りの要です。切替時の設定に誤りがあれば、メールが届かなくなるおそれがあります。ホームページの移行を終えたばかりの段階で、メールまで同時に動かすことは避けました。

申込みから約6時間後、インターネット上の公開情報(DNS)から次の点を確認しました。

  • ホームページの接続先は、従来のサーバーのまま変わっていない
  • メールの受信先(MXレコード)は、従来のサーバーのまま
  • 送信元を証明する設定(SPF)も、従来のまま
  • ホームページは正常に表示されている

その後、実際にやり取りされたメールでも、送信元の証明が正しく機能していることを確認しています。

つまり今回の作業は、ホームページやメールをGoogleへ移したものではありません。既存の環境はそのままに、その横へGoogleの業務機能を追加したものです。

将来メールの移行が必要になった場合は、別の案件として事前に設計し、承認を得たうえで行う方針です。

アカウントの引き渡しと管理

事務長用のアカウントを作成し、初期パスワードで引き渡しました。初回ログイン後に本人がパスワードを変更し、新しい環境へ問題なくログインできることを確認しています。

あわせて、管理者権限の扱いや、担当者が替わった場合の引き継ぎ方法などの管理ルールも整理を進めています。「設定した人にしか分からない」状態を作らないことは、第1回から一貫して大切にしている点です。

試験運用で確かめること

すでに、事務局のNASに保存していたバックアップファイルがDrive上に保存されるなど、実際の利用が始まっています。

今後は、次の点を試験運用の中で確かめていきます。

  • Meetでの会議の録画と、Geminiによる文字起こし・会議メモの作成
  • AIの下書きをもとにした議事録作成で、どの程度時間を短縮できるか
  • Driveでの資料共有と、引き継ぎのしやすさ
  • フォームを使ったイベント申込みなどの受付

生まれた時間を、商店街のために

AIは、事務作業を置き換えるものではありません。時間を生み出すための道具だと考えています。

議事録の作成や資料の整理にかかる時間が短くなれば、その分を個々のお店の支援や、商店街の振興といった本来の業務に充てることができます。

古いPCの再生、ホームページの移行、そして業務基盤の追加と、3回にわたって組合のIT環境を整えてきました。どの段階でも、既存の環境を止めずに残し、確認しながら一歩ずつ進めることを原則としてきました。

組織のIT環境は、一度整えれば終わりではありません。使う人が無理なく使い続けられ、困ったときに支えられる状態を保つことが大切だと考えています。

次回は、事務局のNASのバックアップで起きた障害と、その対応についてご紹介します。

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